銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPその@〜


杜王町ぶどうヶ丘高校校舎屋上

「この間の保健室での出来事、演劇部の「石川梨華」のあの怪我どう考えてもフツーじゃない。」
右手で髪をイジりながら器用に単眼鏡のピントを合わす。
「おまけにその場に居合わせた生徒も「藤本美貴」・・・演劇部。」
単眼鏡で追っていた標的を見つけ
「あの「間田」ってヤツ、ここ何日かで身長縮ンでるのに何で誰も突っ込まないだヨ!」
誰も口にしない事柄なので思いっきり声に出してみた。
「王様はロバの耳」みたなものだ。ンッン〜ン。スッキリ!
取り出したメモ帳の符号を照らす。
「・・・・寺田・・・・・演劇部」
新潟から杜王町に引っ越して直ぐにここが気に入った。
町が好きだ。人が好きだ。学校が大好きだ。
だがこの春から明らかに空気が変わってきている。それが何だか解らない自分がもどかしい。
探偵を真似て色々観察をしてみた、怪しいと思われるのは部員の出入りが妙な「演劇部」
そしてその顧問「寺田」・・・・ワタシが解る範囲ではこの程度。
だが空よ、誓おう!
「この小川麻琴ッ愛するこの町をッ学校をッ決して好きにはさせないッッッ!!」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのA〜


「おぉ〜ウマイウマイ、なんやぁお前も「演劇部希望」かぁ?」
乾いた拍手と共に言い知れぬ空気感ッッ!
真琴は直ぐに声の主を理解した・・・・「寺田」だッッ!
「えぇ〜?そうですかぁ〜?」そして演技した。頭が悪そうな。
平素から真琴は派手好きを装い髪を染め過装飾な風体をしている。
「お前、こんな所でヤニ吹かしてたんちゃうやろなぁ?」
寺田の半笑い顔はすでに犯罪の域だ。
「いやだなぁ〜。てらだせんせい。そんな分けないないじゃん。↑」
(おげぇぇぇ!さわやかに笑ってる積もりかよコイツ!)

「ところで、小川・・お前 俺のこと探っとるやろ・・・」
ゴ ゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ ゴゴ


「ワ・・ワタシ 実はせんせいのすっごいファンで・・・」

「下手な演技やなぁ。 まぁ「才能」は有るか知れン。 」


    グボォオオォオオォッッ!!!

「え?何これ?」
首から棒が出てる?その棒は寺田が持っている?
「な・・・・何しとんじゃぁ!おめぇー!!!」
この位置、明らかに気道を突き破っている。
死ぬ。こんな簡単に死ぬのか?

「生きとったら演劇部、顔出せなぁ」
     

銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのB〜


パチ!
長い睫毛を弾かせた!
飛び起き辺りを見回す。
寺田・・・居ない?
首・・・?!
傷が  無い?・・・?!!
「そんなッ!バカなッ!!あんなに深く「何かを」突き立てられたハズッ!?」
血の痕は・・・ある!
「どうなんてんだぁ?こりゃぁッ!?」
時計を見る4:15分
寺田に刺されて2〜3分経過している。
今のは何だったのか?白昼夢?いや違う。

そうだ「演劇部」だ。
寺田は演劇部に来いと言った。
「演劇部」に行けば理解るハズ。

ドダダダダダッダァァァーッツ!

小川麻琴はヤルと決めたらヤル女だ。
何があるかは判らない。
だがヤルそう決めた。

西館3Fここを曲がれば。
直ぐに演劇部だッ。
    「?」
「!」
通路の真ん中に、当たるのを見越した様にそこに居た。
「あんた・・・・」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのC〜

一年の紺野あさ美。隣のクラスの人間だ。成績は良いらしいが可なりの奇人だって噂の。
「スタンド使いは引かれあう」
こっちの目を見て言う。非常に奇妙な言葉だ。
「? いらんぞ司会?何言ってんの?」
確かに使えない司会者は要らないと思うが。
「これから演劇部に行くんでしょ?」
しれっと歩み始めた。
「何でそんな事が解る。そしてどうして此処に居た!?」

「それはこれからあなたの体験することで理解る様になるわ。」

「それは答えに」
「答えはその扉の向こうに在る。」

ゴゴゴ ゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴ ゴゴ
「扉の向こう・・・・」
振り返った瞬間には彼女は居なかった。

銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのD〜

「くッ。あいつも・・・いや今は・・・そう答えを知れば理解るはず!」
カラリッ!
扉は軽い音を立てる。
「待ってたヨー。」
酷く訛りの有る声。知っている。
「・・・・おまえは」
同じクラスの高橋愛だった。
「先生から話は聞いとるよー。あンたを「試せ」って言われたから。」
そういうと軽くバックステップで距離を取る。
「あンたのスタンドがどういうタイプでどのような能力なのか、見極めさせてもらうンヤヨー」
麻琴には級友の話が全く見えてこなかったが。この空気感には並々ならぬモノを感じては居た。
「何いってるか理解ら無いけれど、本気みたいね!」
左手を前に出し体重を右足に乗せて構えを造った。
片やダラリと手を下げて構えらしいものは一つも無く。
片や正中線を守りバランス良く構えている。
どちらが優位かは火を見るより明らかだった

その瞬間まで。


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのE〜

「ライク・ア・ルノアール!」
  ギャーーーーンッッ
掛け声と共に高橋愛の背後に赤い人影が灯る。

「な!」

思わず絶句する麻琴。
「これがあっしのスタンド、ライク・ア・ルノアール。どう惚れ惚れする位紅いでしョ?」
高橋愛が右手を上げるとそれに同調するようにL・ア・ルノアールが動く。
「さあ出してみなさイヨ。あンたのスタンド!さぁさぁさぁぁァァァァア!」
「スタンド」の攻撃が真琴を捉える。
本来の高橋の間合いでは届かない距離で攻撃を受けている。
「オラオラオラオラオラオラッハァーッッ!」
一発一発、攻撃を喰らう度 気が遠のく
マズイ!このままでは、こんな事で「死ぬ?」
そう思った瞬間、嵐が止んだ。

「へぇ?それがあンたのスタンドかイ?その緑色のが?」

銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのF〜

ドドドドドドド ドドド ドドドド

「これがワタシの「スタンド」?」

緑色で人の形をしている。
高橋の「L・ア・ルノアール」と違って随分筋肉質だ。
フードを被っていて顔ははっきりとは見えない。
服装は何故だか分からないがワタシが着た事が有るような気がする。

口端から血を流し鼻からも血が出ている、殴られた所は腫れて痛む
だが、不思議と「力」がみなぎって来る!

どういう経緯で「スタンド」を身に着けたのか?今はどうでも良い!
いま最優先でヤル事はッ


「高橋!!てめーをブチのめす事ダァーッッ!」

「oioioioioioioioioioioioioioioーiッッッ!」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのG〜

トパパパパパパパパパパパーッ
「何〜ッッ!?」
ワタシの「スタンド」の攻撃があっさり、あっさりと「L・ア・ルノアール」に捌かれる。
「そんなノロい攻撃じゃ話にならンねェー」
高橋が顔を引き攣らせて笑って見せた。
「攻撃とはこう・・・」
シュババババァーッ
高橋のスタンドの攻撃を急いで防御しようとするが・・・間に合わないッ!
「あグゥーア!」
強かに連打を喰らってしまう!
「・・シャープに極めなァねー。」
高橋は手をひらひらと泳がせて挑発してみせる。

・・・なんて憎たらしい笑顔なんだと真琴は心底思った。
「くッ。このぉッ!oiiiiッ−!」
麻琴の渾身の連撃!

スッ!

「あら。可愛い。」
今度は体裁きだけでかわされてしまう。
連撃は空しく周囲の机や椅子を四散させる。
 
ドバババキャヤャーンッ!!

瞬間に原型を留めなくなる椅子や机。
パワーは有るのだ。だが当たらない。
「どうすれば・・・」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのH〜


ライク・ア・ルノアールは拝む様に掌を合わせ始めた。
「何だかハズレみたいねェ。あンた!」
高橋愛は今まで取っていた間合いを自ら詰めて来た。
「その調子だと能力もコントロール出来無いと見たネ。」
ジリジリと間合いを詰めて来た。今までの間合いでも十分攻撃は当たったハズ!

「・・・・の・・能力・・?」
麻琴は困惑した。
今の状態でも常軌を逸した能力なのにこの先が有ると言わんばかりの高橋の言動に。

「そう例えば・・」
ドムゥゥウンッツ!
L・ア・ルノアールが激しく壁を殴りつけた・・・。

「?・・ッ」
麻琴は目を見張った。
L・ア・ルノアールの拳の周りが「練り消し」に指を突っ込んだよーに窪んでいるのだ!
「・・こーゆう事!」
というが早いか高橋愛が身を翻した瞬間。

グボイィィィイィィインッッ!

気の抜けた反発音と共に
壁から丸い「何かが」高速で迫ってきたッッ!


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのI〜

「ッチィイイッ!」
ギィィイーンッ!
目前に迫り出て来た「何か」を麻琴は間一髪で防御いだ。
「ほぉお?この位なら防げるのかネ?」
高橋はケタケタと笑って見せた。

麻琴は目前にある理解しがたいモノに戦慄を覚えた。

壁の一部だけが迫り出ているのだ。
まるで柔らかいゴムの壁を裏から棒で押し出した様に。

「こんな事が・・・」
「コレがあっしのスタンド能力!エネルギーを反発させる能力・・
生き物以外を殴れば凹んだ後に殴ったエネルギーを倍加して凸るわけ!」

「あぁ思わず自分の能力ペラペラ喋っちゃったけど・・・」
高橋愛は続けてこう言った。
「あンた、ここで再起不能になってもらうんだから関係ないかァ。」
その目はどこまでも冷たく、また何よりも情熱的で有った。

物体が迫り出してくる能力。

麻琴は辺りを見回したが「教室」は四方を壁で囲まれて
上には天井があり蓋とした箱の様な場所なのだ。
こんな狭い場所は向こうの好都合過ぎる場所・・・・。

この状況を打開出来るのは  未だ解らない
己のスタンドの「能力」だけなのだ。

「己のチカラ・・・」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのJ〜

ゴゴゴゴ ゴゴゴ ゴゴ

「これで お別れ だかラ。」
そう言うや否やL・ア・ルノアールは瞬く間に床・右壁・左壁に打撃を加える。
 ボグィーンボグゥーングォンッ!
斜め下・右・左からほぼ同時に「迫り出し」が迫って来る。

「うぉおぉぉぉおおおおおッ!」
 四方 結局どこからでも来る。考え方を変えれば四方からしか来ないのだ!
そしてどこから来るのかは先にL・ア・ルノアールが「叩いて」教えてくれる。
「後は出てくる順にブッ叩いて止めるッ!」
ボグァンボグァンンボグァアァンッ!
壁を殴る鈍い音が「迫り出し」の侵攻劇の終わりを告げた。
前・右・左の「迫り出し」を止めきった。ここまでの時間経緯を考えれば・・・
「後ろぉッ!」
麻琴は振り向きざまに右拳を放つ!
前方に意識を集中させて後ろから「迫り出し」を放つ!
麻琴は読みきった心算で居た。

「はぁイ。詰んだ。」
高橋のこの台詞を聞いた瞬間。
麻琴の脳天に衝撃が疾走った。
   ゴシャャヤャヤヤーッ!!
L・ア・ルノアールの「迫り出し」は前後左右の「迫り出し」で動きを止めた上で
頭上からの「迫り出し」を当てる。それが狙いだったのだ。

脳天への「迫り出し」の直撃を受けた麻琴の意識は混濁しきっていた。
思わず先ほどの空振りで破壊した椅子に手を付く・・・・。
「?・・・・ッッ!」
手を付いただけの椅子が奇妙な動きをし、麻琴の手を離れた。


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのK〜

「・・・友・・・情・・FRIEND・・・SHIP・・・・」
自身の力では既に立っておられず壁にもたれ架かりながら麻琴はそう呟いた。

「あらぁあらぁ。アタマ打ちすぎておかシくなっちゃっタ?」
既に勝利を確信している高橋愛はこう繋げた。
「大体、勝ち目なんか最初からなかったんだから諦めて降参すれバよかったのニ。」
「何ならあっしの子分になるかァ?したら寺田先生には悪くいわんでやるよォ。」
高橋は声を上げて嘲た。

「物事を始める前から諦めたり、簡単に他人に屈服するのは・・心が弱い証拠だ。」
満身創痍の麻琴は続けた。
「弱さを言い訳ければそれは醜さになる・・・」
ドドドドドド ドドドド ドド
「ワタシは負けねぇェェエ!心の醜女にゃならねェェェエエエエッ!!!!」
   ズギューーンッ!!
「往くゾォォオオ!「FRIENDSHIP」ッ!」

先刻まで消えかけていたはずの小川麻琴の気迫に押され高橋が後ずさる!
「なッ!こんな事が?こんなハズはッ!」

「ooooooooooiiiiiiii oioioioioioioiooiiiiiiiiiiii」
麻琴の「FRIENDSHIP」はウエハースを分解する様に教室の黒板をあっさりと剥がした。
「使うぜぇぇぇえええ!「能力」ぅううぅぅぅぅううッ!!」


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのL〜

ドゴォオオォオッ!
意とも簡単に黒板に風穴が出来た。

「はぁ?そのバカ力が能力ってかぁ?」
高橋が顔を青ざめさせながら言い放つ。
「oiiiiiiiiiiiiiiiiiiii」
FRIENDSHIPは風穴の開いた黒板を投げつけた!

「その位、よk

ドグォオオオッォオオオォオオオオオオォオオォンッ!

棒立ちの高橋愛に黒板が文字道理風を切って高速で「飛行」し激突した。

ドグシァァアアァアッ!

その衝撃で高橋は後方に吹き飛ぶ。

「先の椅子が氷の上を滑るみたいに動いたので何と無くそう思ったのだけど・・」
「これで確信した!!ワタシのFRIENDSHIPッその能力はッ!」
     殴ったモノの抵抗や摩擦を無くす
          バァーンッ!

ゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴゴゴゴゴゴ ゴゴゴ
高橋愛に激突した黒板が砕け散り石煙が舞う。
「空気抵抗の無い黒板をこの距離で当てれば無事なワケがナイッ!」
そう言いながら麻琴は倒れている高橋に歩みを進めた。


銀色の永遠 〜麻琴のFRIENDSHIPそのM〜

        ザッ!
「・・・体験することで理解る・・・・か」
     ザッ!
「そりゃこんな事は体験しなければ理解出来る訳が無いな。」
ザッ!
麻琴は乱れていた髪を掻き揚げて整えた。
付着した血液がキレイなオールバックを作ってみせた。
   ドォオン!
「質問だ。高橋!お前達演劇部は何をしようとしているッ!?」

ミリミリミリ・・・・
「ふざケるんじゃねェーぞ・・・」
高橋はライク・ア・ルノアールの「迫り出し」を杖の様に使って立ち上がる。
「おメはここで再起不能るんだよォオォォオオォオオオォッ!」
麻琴は腕を掻きながら
「oioi!答える気が無いのが答えかい?」

高橋愛のライク・ア・ルノアールが紅く、紅く輝きだす。
小川麻琴もFRIENDSHIPに持てる限りの精神力を注ぎ込む。

「おちょきんしねまぁアァアアァアアアァアアアァアアアアッ!!!!!」

「ユゥウウウゥウウウウウゥキャァアアアァアアアアアァアアアンンンドゥゥゥウウゥウウウッッッ!!!」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドギューーーーーーーーーンンンンッッ!

打ち合いを制したのは麻琴のF・SHIPであった。

「そんなぁアリエナイ・・・スピードが・・・スタンド能力が成長するなんて・・・?」
床に転がり気を失いかけつつある高橋愛に
麻琴は言った。
「人間の可能性は無限さ、先に進もうとする意志さえあれば。」







高橋愛 重傷
スタンド名:ライク・ア・ルノアール

TO BE CONTINUED・・・